「・・・・・」
シンデレラは馬車に乗っている間、ずっと考えて居ました。
『幸せになってください・・・・・・・』
「どうして・・・骸さまは私の名前を・・・?」
そう、自分の本当の名前。「」とあの魔法使いは呼んでくれたのです。
継母達と一緒に暮らすようになってからは「シンデレラ」としか呼ばれなくなっていました。
灰かぶり少女───つまりシンデレラと呼ばれるようになってから自分の名前なんて記憶の隅に置いてしまっていたのです。
「・・・・・」
は、不思議でした。
継母達が舞踏会へ出発した時は自分も行きたいと強く想っていたのに
でも今は、あの魔法使いに会いたいとそう思っている自分がいたのですから。
「・・・骸・・・さま・・・」
そうして、少ししているうちに馬車はお城の門へと辿り着きました。
*
「す・・すごい・・・・」
門番に尋問を受けることなくお城の中へと入ることの出来たはあたりの鮮やかな雰囲気に気をとられるばかりでした。
でも、彼女は気づいていませんでした。
自分の輝きがどれほどに眩しく、あたりの人間の目を惹いていたのかを。
豪華に輝くシャンデリア
なめらかで優雅な音楽に乗せて踊る人たち。
並ぶご馳走を見て、は小さな腹の虫を鳴らしました。
「・・・そういえば・・・今日は何も食べさせてもらってなかったんだわ・・・」
今日は一日中ドレス作りに追われていたことを思い出します。
は駄目だと分かっていながらもどうしても飢えには勝てず料理に手を伸ばしてしまいました。
「・・・・」
一口口にした料理はとても美味しく、は止めることが出来ませんでした。
名前も知らない勝利に舌鼓をうっていた、その時。
『まぁ・・・あのお方が王子様・・・!!』
静かながら、会場がざわめきました。
はお皿をテーブルに置いてそのざわめきの中心を見ます。
「・・・王子・・・様・・・?」
そう、今日の舞踏会の主役でもある王子様がいらっしゃったのです。
一目見ようと思いますが、人ごみのせいでは王子様の姿を拝見できません。
むしろ、人ごみに押されてどんどんと遠ざかって行ってしまいます。
「王子様!こっちをお向きになって!!」
「ああ!行ってしまわれたわ・・・」
「・・・・」
周りの反応からして、王子様はその場から去って行かれたみたいでした。
は一遇の機会を逃してしまったのですから、残念に思いました。
少し人ごみに酔ってしまったのかも知れません。すぐれない気分を落ち着けるためにはベランダに出ることにしました。
「あ・・・ここも・・」
でもベランダはどこもかしこも人でいっぱいでした。
どこか一人になれる所はないだろうかと思い、会場を歩き回って一つ、階段を見つけました。
その辺りには人の気配はなくどうやらベランダへと続いているようです。
は迷うことなくその階段を上って行きました。
下では会場のにぎわった声が響いています。
「・・・・やっぱり・・・私なんかがこんな所へ来てはいけなかったんだわ・・・」
ベランダに出て、シンデレラは呟きました。
冷たい夜風が頬を撫でていきます。
ああ、せっかく骸さまにこうしてもらえたのに・・・と、は溜息をつきます。
「ねぇ、・・・そんな所で何してんの?」
「え・・・?」
そうすると急に後ろから声をかけられました。
声のトーンからしてそれは男の人の声で、はどう反応をすればよいのか戸惑いました。
「・・あの・・・・あなた様は・・・?」
夜風がまた頬の傍を駆けていきました。
に声をかけた青年は結んでいた口を開けて言いました。
「ん、一応今日は婚約者探しらしいけどね。」
「え・・・・じゃ・・じゃあ・・・このお城の王子様ですか!?」
「そうだけど、・・・何?」
は驚いてその青年に言いました。青年はそれに相槌を帰しました。
王子の名を、雲雀といいます。
まさか、まさか。
そんな思いでは一杯になっていました。
まさか、あの憧れの王子さまが自分の目の前にいらっしゃるなんてこれこそ本当の夢なのではないかと。
「・・・で、君はこんなとこでなにしてんの?」
「あの・・私は・・・・」
「・・・・・」
眼の前にいるのが王子様だと分かったらそれこそは焦ってしまっていました。
どう言ったらいいのか、言葉が見つかりません。
「・・・・・・僕、君に決めたよ」
「え・・?・・・あ・・の・・」
「婚約者。」
は少し自分に言われたことが理解できないでいました。
王子さまが・・・自分を・・・・・?
自分を、婚約者に・・・?
「ええ・・・!?でっ・・・でも・・・!」
「でも、何?」
「でも・・・私は・・・・」
今の自分の華やかな姿があるのは骸さまの魔法のお陰なのです。
その魔法が切れてしまうのは夜の12時。そう、あと1時間しか時間がありませんでした。
1時間もたてば自分は又「シンデレラ」へ戻ってしまう。
なのにそんな自分を王子様にさらけ出すことなんてできませんでした。
「断らせないよ。僕が決めたんだからね。」
「王子・・様・・・・」
そっと、王子の手がの顎に伸びました。
そして開いている方の手で、をぐっと抱き寄せるようにします。
「君に惚れたよ・・・」
そう言うのと、王子がに口づけるのとはほぼ同時でした。
*
その後で王子とは会場で踊り出しました。
それを驚くように、または嫉妬するように周りの人間は見ていました。
ですが、の美しさには誰も敵わないということ。王子がを選んだということに誰もが苦しくも納得していました。
「あの・・・私・・・踊りが下手なのです・・・」
「そんなの気にしないよ。こんなものは適当でいい。」
踊っている間、雲雀王子はふっとに笑顔を向けました。
も、王子に笑顔を向けました。
今、この現状が嘘ではないということ。
夢ではないということ。
このままいけば自分は幸せになれるということ。
は、幸せでした。
王子様に婚約者に選ばれたのも始めは自分の作り出した幻想なのではないかと疑いましたが
でもそれも違うと分かって、彼女は本当に幸せでした。
「・・・・・・」
『幸せになってください・・・・・・・』
でも、どこか心の中が詰まっていました。
今自分は憧れの王子と時間を共にしているというのに、
でも、それでもあの魔法使いの姿が浮かんでしまうのはなぜなのでしょうか。
「・・・・・・」
は、踊りながら大きな時計を見上げました。
12時になるまであと10分しかありませんでした。
は現実に引き戻される様に王子の手をほどいて、その場を去ろうとしました。
『・・・・・・・』
魔法が解けてしまうから王子の傍から逃げました。
でも、もう一つ違う理由をは感じていました。
骸さま以外の男性と居るのが、どうしても苦しくなってしまったのです。
どうしても早く引き返して骸さまに会いたいと思ってしまったのです。
はその場から逃げるように去っていきました。
辺りは騒然となり、王子はを追いかけます。
「・・・・」
コツ、コツ、コツ、
一歩一歩確実に階段を下りていきます。
門の前にはあのカボチャの馬車が待っていてくれました。
「・・・あっ・・・!」
そうすると、階段の途中で靴が脱げてしまいました。
もう一度その靴をはこうとしますが、もう本当に後ろまで王子が追いかけてきています。
「何逃げてんの・・君・・・」
「ご・・ごめんなさい・・!」
は仕方なくガラスの靴を残して馬車に乗り込みました。
それと同時に馬車をひく馬が走り出します。
「・・・・・・」
乱れる息を整えながらは遠くなるお城を見送りました。
何故だか、心の中が言い表せない気持ちで一杯になっていました。
家に着くと同時に、カボチャの馬車は消えてしまいました。
いつの間にか華やかなドレスも消えていて、または元通りの「シンデレラ」になってしまいました。
「骸さま・・・いたら・・返事してください・・・」
静かな部屋の中では呟きました。でも、骸からの返事はありません。
舞踏会に行って王子様に会って、そこで彼女は初めて知ったのです。
自分は王子様ではない、別の誰か
───あの魔法使いに恋をしてしまっていたのだと。
*
それから3日経ったある日。
舞踏会が終わってからというもの世間は、王子の決めた「消えた婚約者」の話題で持ちきりでした。
継母達が話していることによればその「消えた婚約者」はガラスの靴を落としていき、
城が総出でガラスの靴をはける娘を探しているという事なのでした。
「もしかしたらわたくしの足にぴったり入るかもしれませんわ!」
「うふふ!・・・そうすればこんな生活ともお別れですわね!お母様!」
はまた変わらぬ生活を過ごしていました。
魔法使いもあの日から出会う事もなく、あの日の事は自分の夢だったのではないかと何度も思いましたが、
自分が残して行ったガラスの靴の話を耳にする度、夢ではないということを知りました。
きっとこれからも変わることのない生活。
それを考えると苦しかったですが、
骸様に会えないかもしれない、ということだけが心残りでした。
初めは、王子様に目をつけてもらえれば幸せな生活が遅れるとあこがれていました。
でも、今はそれは願いませんでした。
それよりもは、あの魔法使いへの愛しさで溢れていたのです。
コンコン、
急に家の扉がノックされました。
それを聞いて継母達は互いに顔を合わせて微笑み合います。
きっと城のお使いの方が「消えた婚約者」探しにいらっしゃったのでしょう。
「・・!お前は奥に居なさい!」
「あ・・はい・・・」
はその場に立っているともう一つの部屋の奥に押し込まれました。
バタン、と扉を閉められると隣りの部屋からは継母達と使いの人とのやり取りだけが聞こえてきます。
シンデレラは耳をそばだてていました。
「何?この二人しかいないの?」
「ええ!そうです!王子様!」
どうやら王子様本人もいらっしゃっているようでした。
「ふん・・・・・何?他にこの家に女はいないの?」
「え・・ええ!いません!ネズミ一匹いませんわ!」
どうやら、継母達はガラスを靴を履けなかったようでした。
この家にはがいるというのに、その存在を隠していました。
それを聞いた王子は鋭い目で隣りの部屋を見ます。
「・・・嘘はつかないでよね。・・・そこにもう一人いるでしょ。」
「ひっ・・・」
雲雀王子はが隠れている部屋を示して使用人に開けさせました。
はいきなり部屋のドアが開けられて何事かと思います。
「あ・・・あの・・・」
「シンデレラちゃん。少しこの靴を履いてみてくれないかしら?」
「・・・あ・・・」
いつもからは想像できない口調で継母にそう言われたは、ゆっくりと部屋を出ていきました。
そうして王子達の前で一礼して、置いてある靴に、自分の足を通しました。
「ま・・・まぁ・・・・!!」
「ワオ、君か・・・・」
そうするとその足はぴったりと靴の中に収まりました。
雲雀王子は薄らと笑顔を浮かべます。継母達は傍で驚いて声をあげました。
「あの・・・わ・・私・・・」
「さっそくだけど、君を城に連れていく。もう逃げないでよね。」
雲雀王子はの腕を掴みました。
はいきなりのことで驚いて、その手を振り払ってしまいます。
「何・・・?」
「・・・あ・・・あの・・・」
は下を向いて口ごもりました。
その態度に継母達はじれったくなります。
自分が選ばれなくてもが選ばれれば少しでも裕福な暮らしを貰えるかもしれないと思ったからでした。
「わ・・・私・・・王子様とはいけません・・・!」
「ワオ」
「しっ・・シンデレラ・・!貴女何を言っているの・・!?」
の突然の言葉に全員が驚いて口々に言葉を言います。
「どうしてだい」
「ごめんんさい・・・・王子様・・・・私・・・ほかに好きな人がいるんです・・」
「・・・・・」
は自分の胸の前でぎゅっと拳を握って言葉を発しました。
今、の思い浮かべる想い人はあの魔法使いしかいませんでした。
「私はシンデレラです・・・・・私はシンデレラ。私は、灰かぶり少女。
もうそれでいいって想っていました。だけれど、あの方は・・・・・・・・・・・・」
『・・・・』
「あの方は・・骸さまは本当の私を呼んでくださいました・・!シンデレラから「」に変えてくださいました!
・・・・・・私は・・・・・そんなあの方をこんなにも愛しく想っているのです」
「・・・・」
「ですから・・・王子様・・・すみません・・・・」
そうしてはその場から逃げるように立ち去りました。
急な事で誰もを追いかけることが出来ませんでした。
「・・・・・・っ」
は、山道を裸足のまま走りました。
魔法使い様に、骸様に会いたい一心で、小さく彼の名前を呼んで、
足の裏が痛くても走り続けました。
「・・・・・!・・・・」
急に誰かに腕を引っ張られるような感覚に陥って、は足を止めました。
眼の前には誰もいません。
でも、自分の後ろに確かに誰かがいる気配がありました。
「骸・・・さ・・・ま・・・・?」
「・・・・・・・・」
はゆっくりと振り返りました。
それと同時にの目から涙が溢れていきます。
視界が段々とぼやけていきます。滲んでいきます。
は、そんな視界を擦ってゆっくりとその人に近づいて行きました。
流したくなくても、涙はどんどん出てきました。
嬉しかったのか、悲しかったのか。
そこには、骸が居たのですから。
「骸さま・・・・・っ・・骸さ・・・」
「なんて・・・馬鹿な事をしたんですか・・!貴女は・・!」
そう言われるのと同時には骸に優しく抱きしめられました。
は骸の優しい温かさをぎゅっと掴みます。
「どうしても・・私・・・私・・・幸せになりたかった・・・・」
「貴女は王子と結ばれて幸せになるべきです。」
「それは違います・・!」
「・・・」
はもっともっと骸のローブを強く掴みました。
「王子様と結婚して裕福な暮らしをするよりも、なによりも・・・私は骸さまが好きなんです・・・
お願いだから・・・分かってください・・・・」
はぐずっと泣きをもらしました。
継母達にどれだけ蔑まれようと流さなかった涙をはたくさん流していました。
「・・・・いいんですか?」
「・・・・・」
骸はそっとを解放しました。
二人は静かに向き合います。
「僕は魔法使いです。人ではありません。」
「・・・・・」
「僕はあなたの何倍もの時間を生きる。人間の貴女は僕と同じ時を生きることはできません。」
魔法使いは今までで一番悲しそうに言いました。
でも、はその事をどこか心の中で感じていました。
魔法使いと人間が同等に生きる事なんてできないということ。
は、心の何処かで分かっていたのかも知れません。
「それでも・・・それでも・・・私は骸さまが好きです。」
「・・・・」
「灰かぶり少女ではなくて、私をと呼んでくれたこと。私は、嬉しかった。」
「嬉しかった・・・・」
もう一度、は骸に身を預けました。
それに答えるように骸は優しくを抱き返します。
ゆっくりと二人は唇を重ねて
彼女は本当に心の底から「灰かぶり少女」ではなくなっていました。
そうしてその日、は継母達や、王子のもとから姿を消してしまいました。
同じ時を過ごせるように
同じ時間を過ごして生きられるように
魔法使いが彼女に魔法をかけたのは、
まだ、先のお話のことです。
END
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シンデレラのパロっぽいもので・・・
もうこれがパロなのかも分からないくらい
内容がズタボロで・・・・
何が書きたかったのか分からないYO☆(蹴)
いや本当にすみません。
ご存じない方もおられると思うんですが、
「シンデレラ」って「灰かぶり少女」って意味らしいですよ。
・・・たしか・・(←)
ですから「シンデレラ」っていうのはあだ名みたいなものらしいんです。
・・・たぶん・・・(←)
リクのお相手は骸さんという事で
シンデレラっつーことは王子が骸さんかー
とかって思いつつ・・・裏を読んで魔法使いで・・!(は?)
魔法使いと恋するのもありかなと思いまして・・OTL
もう少し骸さんの心境を書きたかったんですが
力着き果てました、すみませ・・!
*3333番踏んでくださった柴音さまにささげます
リクありがとうございました!
こんな変なものですが、おゆるしくださいませ・・・!