Music: off / on







      一度愛した人間







      愛し抜くと決めたというのに








      たった一言でそれを壊すことができるのだから、言葉は時として武器に例えられるのですね。














      ”わかった。・・・さようなら”













      に愛しあうことの「終わり」を告げた時、僕はそれだけで精いっぱいだった。


      彼女にも弱さがあるのを僕は知っている。
      僕をいつも支えにして、愛してくれていたのも知っている。


      だから、もし僕が別れを告げたらはその場に泣き崩れるかもしれない。

      立ち直れなくなるかもしれない。



      そんな風に思った。


      だが、は泣くことすらせず僕の「別れ」の言葉に小さく言葉を返した。



      ”さようなら”と。



      意外にもあっさりと理解してくれたのか、と思うのと同時に
      今までの日々が愛しく思えた。












      マフィアの世界は毎日が厳しいものだ。

      たとえボンゴレファミリーだと言っても、逆にそれだけ敵にする数も多くなる。
      つまり、一言で言えば「危険」なのだ。




      僕はこれから先、別にどうなっても構わない。

      ボンゴレの守護者という立場に立っていける。


      一人の人間を殺す事も、誰かに命を狙われる事も厭わないしもう慣れてしまった。


      むしろそれが今は楽しく感じる。




      でも、は違う。


      は人を殺すことも、人に命を狙われることも何にも慣れてなどいない。

      


      そうであるのに、そんな彼女を僕の傍には置いておけなかった。


      僕の傍に置いておく事で、彼女を危険に巻き込みたくなかった。







      だから、僕は彼女に別れを告げたのだ。






      もう、以外僕は誰も愛さないと


      そう心に誓って






      ・・・こんな言い訳、カッコ悪すぎますかねぇ


      自嘲気味に笑いながら、僕は歩を進めた。













      「骸・・・お前・・どうしたんだ?」


      「おや、・・・なんの事ですか。」






      昔の彼からは連想できないほどのその落ち着いた雰囲気の沢田綱吉が、僕に話かけた。

      僕の今の未練の籠った顔つきを見れば、誰だって僕の”何か”に気がつく。







      「いや・・・なんか・・いつもと違う顔してたから」



      「・・・・」








      脳裏に彼女の笑顔が浮かんだ。



      あの愛しい笑顔で僕の名前を呼ぶを、僕はたった今突き放してきたのだ。


      そんな残像がまだ残っているのは不思議ではない。








      「いえ、大丈夫ですよ。ご心配ありがとうございます」






      「・・・・・さっき、とすれ違ったんだ。」







      「・・・・」







      ソファから腰を上げて歩きかけた僕の動きが止まる。

     









      ”


      今その名を聞いてしまった僕は、もどかしい気分に襲われた。








      「、泣いてたんだ。・・・すれ違っただけだけど、見間違いじゃなかったと思う。」


      「・・・・・」





      「・・・・・」





      「・・・・・・・そうですか」





      「・・・骸・・・お前・・・」




      僕は10代目に背を向けたまま答える。
      僕のその一言の重みを感じたのか、10代目はもう何も言わなかった。






      僕は、その部屋を後にした。


















      

      ”わかった。・・・さようなら”











      泣いていた。



      は、泣いていた。



      いや、違う。





      僕が、彼女を泣かせてしまったんですね





























      「・・・・」


      「・・・・」






      その後で道を歩いて進んでいくと、それはとてもタイミングよく彼女に出会った。


      雲雀恭弥も一緒にいた。


      と雲雀恭弥の距離はとても近く、ただ話をしていた風には思えなかった。











      ・・・なんでしょうかね



      初めてですよ。





      こんなに心が締め付けられるのを感じたのは。




      嗚呼、これが「嫉妬」というものなのですね。











      「・・・・」


      「・・・・」



      僕はの方を振り向かなかった。


      もまた、僕の方を見ずに下を向いていた。





      「・・・・・何、何の用?」







      雲雀恭弥は少し怒気を含んだように僕に言い放つ。






      「いえ、別に。ただ通りかかっただけですよ」






      そんな彼に僕はそう述べた。





      そうしてゆっくりと歩を進めて、二人の横を過ぎ去って行った。











     「では失礼します。・・・雲雀。・・・・

















      ・・・・。」

















      そう呼ぶのは、自分でも心を潰していたようなものだった。



      どうして愛する女性を今更苗字で呼ばなければいけないのでしょう



      どうして僕はこんな判断を下してしまったんでしょう






      手を伸ばせば、届くこの距離で



      どうして今、彼女を取り戻そうとしないのか






      何故彼女に別れを告げてしまったのか







      本当に、後悔の海で僕は溺れていた。






























      いつかまた、貴女の笑顔を僕が手に入れていいのなら









      それまで、すべては待っていてくれるでしょうか










      いつか







      






      貴方と愛し合える時が来るまで・・・


















  いつか






      (僕は後悔に心潰されるだろう)



      end



      080401



    music by Litty






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      はい、「いつか 骸ver」でございます
      骸さんのキャラなら
      「何があっても僕はお守りしますよ!」
      なキャラだと思うんですがあえてそこは
      「守りたいが、僕には守る自信がない」
      的な事にいたしました、はい。

      さんを巻き込みたくなかったんですね、骸さんとしては。

      だからわざと彼女を突き飛ばした。
      ・・・って感じです。